特定非営利活動法人 イージェイネット(Ejnet)

医療業界の就労環境改善や、適正な人材評価が行われるための仕組みづくりをお手伝いします。

Ejnetメルマガバックナンバー・第20号

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◆◇NPO法人イージェイネット メールマガジン第20号◇◆ 
「時代をリードする医療人が働きやすい病院の作り方、お教えします」 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2011/7/29 ━━━ 

◆◇━━━━━━━━◆◇◆今月のニュース◆◇◆━━━━━━━━━◆◇ 
〔1〕『イージェイネットがズバリ聞く!働きやすい病院の作り方Q&A
    日本看護協会編』
    ◆公益社団法人 日本看護協会 常任理事 小川 忍氏
〔2〕イベント実施報告
   『イクメンプロジェクト23 in 旭医』
     ◆旭川医科大学医学部 皮膚科学講座  准教授 
     二輪草センター副センター長     山本 明美氏  
〔3〕イージェイネット事務局からのお知らせ
  ①UBSでのプレゼンテーション報告
    ②新刊紹介
   「院長先生の労務管理基礎講座」財団法人労災保険情報センター刊
〔4〕メルマガ事務局より編集後記

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〔1〕『イージェイネットがズバリ聞く!働きやすい病院の作り方Q&A
    日本看護協会編』
       
 【回答者】公益社団法人 日本看護協会 常任理事 小川 忍氏
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■Q1.
 病院の交代性勤務に従事している場合、特に女性看護師は出産・育児の
ために離職する可能性があります。看護職の離職防止のために、特に有効
であると思われる取り組みをご紹介下さい。
□A1.
 病院では、日勤、深夜、準夜、早出、遅出などの多様な勤務を、スタッ
フ全員がまんべんなく“平等”に担い、何らかの事情で夜勤ができない、
時間外勤務ができないスタッフは退職をするか、パート職員に身分を変更
するように言われてきました。労働基準法等の労働法令には、妊産婦の夜
勤免除や育児のための短時間勤務制度が規定されていますが、労使ともに
労働法令の正しい理解を進め、労働時間管理を適切に行うことが必要です。
 そして、医療従事者の多様な価値観、ニーズに対応した多様な勤務形態
を導入することをおすすめします。とりわけ、夜勤免除や短時間正職員制
度の導入を行い、制度を利用しないスタッフに夜勤等の負担を増やすこと
のないように、雇用管理、業務管理、労働時間管理等の人的資源管理を適
切に行うことが必要です。
 これらの取組みを行うために、病院組織にワーク・ライフ・バランス推
進委員会を設置して、現状の把握・分析、対策の策定を行い、対策の実行
と評価をPDCAサイクルで実施していくことです。全員参加型の対策づ
くりや組織内外に取組み状況を公表することで、スタッフのモチベーショ
ンアップ、患者さんや地域住民の病院へのイメージアップにつながり、医
療従事者と患者から選ばれる病院へと変わっていくに違いありません。
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■Q2.
 病院内で看護職へのキャリア支援として取り組まれている、プリセプタ
ーシステムやラダーシステムについて、ご紹介下さい。
□A2.
 新人看護師が一人前の看護師として働くためには、卒後の臨床研修が不
可欠です。看護の仕事は、患者の生命を左右する判断と処置を行う極めて
責任の重い業務を担っており、とくに一人前の看護師として育つまでの間
は、きめ細やかな指導が必要です。新人の臨床研修の目的は、新人指導だ
けではなく、医療安全と離職防止が目的になっています。上司である看護
師長や部署の研修担当者が新人指導を行うほかに、日常的な業務を通じて、
きめ細やかな指導を行うために先輩看護師がプリセプターとして新人を指
導しています。
 ラダーシステムは、人的資源管理の中でも、スタッフ個々の看護実践能
力を評価し、人材の育成を行うための仕組みです。ラダーの最初の段階で
ある新人の卒後研修を経て、基本的な看護技術・知識をマスターして一人
前の看護師となり、次に中堅看護師として新人指導等の役割を担う能力を
有し、さらに次の上位の段階へと進む4つのステップが標準的なラダーで
す。看護に対する基本的な姿勢や看護実践能力だけではなく、組織的な役
割や教育研究的な能力なども含めて評価がなされます。
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■Q3
 専門スキルを持つ看護師へのキャリア支援について、ご紹介下さい。
□A3
 高度化、専門分化が進む現在の医療環境に対応する看護の質の向上を図
るために、看護界の総意で、資格認定制度が創設されました。専門看護師、
認定看護師、認定看護管理者の3つの資格認定です。
 とくに、認定看護師は、「救急看護」「皮膚・排泄ケア」「集中ケア」
「緩和ケア」「がん化学療法看護」「がん性疼痛看護」「訪問看護」「感
染管理」等の21分野の領域で認定が行われ、2011年4月1日に現在で7,334
名が登録しています。
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■Q4
 男性看護師の絶対数は少ないですが、これから増加するとも言われてい
ます。今後の男性看護師へのキャリア支援等についても教えて下さい。
□A4
 男性看護師は、女性よりも定着率がよく、多くの病院から男性看護師を
採用したいという声が聞かれます。男性は女性よりも大学進学率が高いと
いうこともあって、看護教育を行う大学の増加を背景に、看護の道に進む
男性も増えてきています。専門職であるので、男性看護師だけの特別のキ
ャリア支援はありませんが、男性であれ、女性であれ、得意分野や関心の
高い分野で活躍することが、スタッフのやる気や能力を引き出すことにな
るものと思います。
 男性看護師は少数ですが、男性の認定看護師の割合は女性よりも高く、
スキルアップをしてキャリアを開発していきたいと希望する男性看護師は
少なくありません。まだまだ数は少ないですが、看護部長や副院長に就任
している男性看護師も誕生しています。
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■Q5
 全国的な産科医不足(高齢化等)が指摘される一方、お産の現場を守る
ためにも、助産師さんらへの期待は高くなるものと考えられます。
日本看護協会としての助産師へのキャリア支援等も教えて下さい。
□A5
 晩婚化に伴い高齢出産が増加しています。当然、妊娠・出産に伴うリス
クも高くなっており、ハイリスクの妊娠・出産に対応できる助産師を増や
すとともに、産科医と助産師が連携を強めて、安心してお産ができる体制
を整備することが課題になっています。
 日本看護協会は、助産師のキャリアパス及びラダーの開発に取組むと同
時に、正常分娩も含めてすべての出産を産科医が担うのではなく、正常な
妊娠と出産は助産師が担い、ハイリスクの妊娠・出産に対しては産科医が
助産師と連携をとりながら対応する「院内助産システム」の普及に取組ん
でいます。
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■Q6
 病院でチーム医療を推進する上で、看護職のリーダーシップのあり方に
ついて教えてください。
□A6
 病院では、医師、薬剤師、看護師、臨床放射線技師、臨床検査技師、理
学療法士、栄養士等の様々な専門職が働いています。医療行為については、
医師のリーダーシップが求められますが、看護職は24時間365日、夜勤・交
代制勤務を行いながら、患者への医療、看護を担っている、患者のより近
くにいる専門職です。
 患者中心のチーム医療を推進するために、患者にとっていま何が最も必
要なのか、患者のおかれた状態を把握し、患者のアドボケイト的な役割も
行いながら、職種間のコミュニケーションをとり、情報の共有化を大切に
して、様々な専門職が連携して医療やリハビリテーションを提供できるよ
うに、その要としての機能、役割を担うことが求められています。
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■Q7
 最後に、イージェイネットメルマガ読者に、メッセージをお願いします。
□A7
 医療従事者のワーク・ライフ・バランスを推進するイージェイネットの
活動に期待をしています。さる6月17日、厚生労働省の「看護師等の『雇用
の質』の向上に関する省内プロジェクトチーム」が報告書をとりまとめ、
関係5局長連名の通知が出されました。
 今後、都道府県段階での「ネットワークづくり」、行政と医療機関での
「職場づくり」「人づくり」の施策が進められます。看護職はもとより、
医療従事者全体のWLBを推進するチャンスですので、読者の皆様のご支
援をお願いいたします。
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〔2〕イベント実施報告

◎『イクメンプロジェクト23 in 旭医』(平成23年7月6日)
 いまや一流企業ではあたりまえのイクメンですが、医学の世界ではまだ
まだかわり者。「家庭を顧みず、仕事に没頭するのが美徳」、「子どもの
世話のために医師の仕事をおろそかにするなど論外」という考えがまだ多
くの管理職にしみ込んでいるようです。
 そもそも女性医師が育児のために離職しがちという問題の根本原因は育
児を女性の仕事としてきたことにあります。医学界においてこそイクメン
を早急に浸透させねば、と考え平成23年7月6日、大学内でイクメンをテー
マにイベントをしました。
 まず前日から講義室前に各診療科のイクメン実績をポスターで展示して
いただきました。職員や学生に休憩時間にじっくりそれを見ていただき、
翌日ベストポスターを選出し表彰するという趣向です。他の部署と競うこ
とで大学全体のイクメン度を上げることが狙いです。
 当日は講義室内で第1部としてイクメン医師、看護師それぞれ1名の体験
談のあと、NPO法人Fathering Japan代表の安藤哲也さんの講演を聞いてい
ただきました。安藤さんの「家族サービス」という発想ではだめで、主体
的に育児を担当すべきという話に、会場にいた管理職クラスの男性は目か
らうろこという表情でした。昭和世代には耳が痛い内容もあったかと思い
ますが、安藤さんの軽妙な語り口に思わず引き込まれていき、何度も会場
に笑い声が響きました。
 第2部はパネル討論としました。まず子供が二人いる男性医学生から「イ
クメンからみた働きやすい職場環境」というタイトルで発表をいただきま
した。それをうけて3名の男性教授が自身のイクメン度とイクメン部下への
理解をお話くださり、旭川医大でならイクメンが安心して働けることをア
ピールされました。
 100名近くが参加してくれた今回の取り組みは総じて好評で、安藤さん
に近い将来、実際に育児休暇をとった男性医師が増えたと報告できる気が
しました。
<旭川医科大学 二輪草センターHP>
【報告者】
 ◆旭川医科大学医学部 皮膚科学講座 准教授 
  二輪草センター   副センター長  山本 明美氏  
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〔3〕イージェイネット事務局からのお知らせ

①UBSでのプレゼンテーション報告(報告者:瀧野敏子)
【日時】2011年7月19日(火)午前11時半~午後1時
【場所】UBS銀行東京支店 Wealth Management
    東京都千代田区丸の内1丁目5番1号 新丸の内ビルディング 
【発表者】瀧野敏子
【同席者】西井弘和(イージェイネット)、岡本拓也、青木三紀(SVP) 
【タイトル】『イージェイネットの紹介とご相談セッション』
【対象】Wealth Management(富裕層を顧客に持つ平均年齢45歳前後の社員)
【目的】UBS社員にとっては、自らのもつスキルでNPOの経営等に助言する
    ことで社会貢献を行なう。今回は、SVP東京の紹介によりプレゼン
    の機会を得た。
【ゴール】イージェイネット紹介。働きやすい病院認証事業(ホスピレート)
    を拡大するためのアイデア、およびイージェイネットの会員制度に
    ついての助言を得る。
【結果】ホスピレートに関しては、①独立性・客観性・評価内容が肝要である。
    ②S&Pの勝手格付などをヒントにしてはどうか、③HAYシステム等、
    様々なコメントが出た。
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②新刊紹介(報告者:瀧野敏子) 
「院長先生の労務管理基礎講座」財団法人労災保険情報センター刊 
 特別寄稿として、「ワークライフバランス(WLB)の阻害要因」を担当しま
した。まず、現代若者気質を考慮して、経営者側に、「Diversity and Inclus
ion(多様性の受容と包摂)」という視点から発想の転換が求められると説き、
医療機関におけるWLBの阻害要因について解説しています。その上で、WLBを高
めるための国のグランドデザインの必要性を力説したうえで、実際の病院の取
り組み例を紹介しています。
「院長先生の労務管理基礎講座」
財団法人労災保険情報センター
平成23年3月発行
定価 1,600円(税込)
A4判/172頁

******<♪NPOイージェイネット メルマガ事務局より編集後記♪>******** 
7月配信(第20号)のメルマガはいかがだったでしょうか?
日本看護協会の小川忍常任理事様には、先月に引き続いて今月ではQ&Aに丁
寧にお答え頂きました。今後も看護職の担う責任や役割も幅広くなり、男性
看護師や資格を持つ認定看護職、お産の現場を担う助産師の皆さんへの期待
も高くなるものと思います。現在取り組まれている看護職への先進的なWLB
支援への成功が、医師や他の医療職にも波及するものと期待しております!
小川常任理事様には大変お忙しい中、2ヶ月に渡りご執筆を担当頂き、誠に
ありがとうございました。
また旭川医科大学の山本先生には、初のイクメンプロジェクトの実施報告を
頂きました。医師の世界では、イクメンという言葉はまだまだ馴染みにくい
印象ですが、今回のイベントでは事前に大学の診療科毎でのイクメン実績の
掲示や、イクメン医学生・看護師・医師や男性教授らに御登場して頂いて意
見を出して頂いたりと、単なる講演会だけに終わらせていないのがとても印
象的でした。
今後も旭川医科大学におけるイクメン度が上がることを期待しております!
今後も、引き続き当NPOのホスピレート認証を実際に受けている病院より教
えて頂いた「働きやすい病院づくり」のポイントなど、参考になる情報を定
期的にお届けする予定です。今後もよろしくお願い申し上げます。(藤川) 
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NPO法人イージェイネット  http://ejnet.jp/ 
(特定非営利活動法人 イージェイネット(女性医師のキャリア形成・維持
・向上をめざす会)) 
NPO法人イージェイネットブログも更新中!  
このメルマガに対し、ご意見・ご感想・ご質問がありましたらメルマガ担当 
の藤川までご連絡をお願いします。 
(お問い合わせ先  ejnet-office@umin.ac.jp  メルマガ担当藤川) 
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