特定非営利活動法人 イージェイネット(Ejnet)

医療業界の就労環境改善や、適正な人材評価が行われるための仕組みづくりをお手伝いします。

メルマガバックナンバー・第42号

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◆◇NPO法人イージェイネット メールマガジン第42号◇◆
「時代をリードする医療人が働きやすい病院の作り方、お教えします」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2013/5/31  ━━
 
◆◇━━━━━━━━◆◇◆今月のニュース◆◇◆━━━━━━━━━◆◇
 〔1〕『 医療従事者はメンタル・タフか? 』
   ◆独立行政法人労働者健康福祉機構 本部研究ディレクター
        香川労災病院 勤労者メンタルヘルス研究センター長
                                            小山 文彦  氏                   
〔2〕『 女性医師復職支援での協力体制について(後編) 』
     ◆浜松医科大学医学部 産科婦人科講師 
                       内田 季之  氏    
〔3〕イージェイネット事務局からのお知らせ
  ①『働きやすい病院評価』/2病院を認証しました。
  ②働きやすい病院評価事業(ホスピレート)説明会など
〔4〕メルマガ事務局より編集後記
 
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〔1〕『 医療従事者はメンタル・タフか? 』 

 かつて、病院職員のメンタルヘルスについて講演の準備をしていた時、
これは気をつけなければいけないなと感じたことが2つありました。一つ
は、当時日常的に行っていた時間外労働の問題です。患者さんのために時
間外に病棟や救急で働くことは、務めだから「あたりまえ」になりすぎて
いたこと。もうひとつは、医療者は他の人のケアを施すプロだから、自分
たちのストレスはうまく処理できてあたりまえと周囲の人は誤解している
かもしれないということ。当時の担当患者さんから「先生でも落ち込むこ
とってあるんですか?」と問われた時には、苦笑せざるを得ませんでした。 
 似たようなこととして、東日本大震災後、私も医療支援に向かいました
が、震災直後の惨事を目の当たりにしながら救援を続けた消防や自衛隊員
等が被るストレスについても、最近とくに啓蒙が図られてきました。浅海
明子さん(香川カウンセリングセンター所長・臨床心理士)達が多方面で
講義もされていますが、ある大学で惨事ストレスについて講話した後日談
として、彼女がこんなことを話してくれました。瓦礫の中で救援活動を続
ける人たちは、激しい損壊の中、彼ら自身が抱く悲嘆や恐怖は少なからず
あるわけですが、その日の聴講者からは、「救援者側にとってもストレス
というものが、人としてあたりまえにあるのだと知ることができてよかっ
た。」という感想が多かったとのことです。
 そこで、あらためて医療従事者のメンタルヘルス保持を考えた場合、ま
ず思いつく疑問があります。それは、①医療職ゆえに患者のための過労は
あたりまえか?、②いわゆるSilent majority  は美徳のようだが、ほん
とうに‘徳’か?、③安全衛生管理が、一般企業等と同レベルにあるか?
の3つです。ストレス対処能力に重要とされるレジリアンス(心の弾力)
は、けして自分任せで獲得できるものではありません。
 欧米でサバイバーと呼ばれる、トラウマを背負っても精神変調をきたさ
ない子供たちのように、あるいは、東日本大震災後、肯定的な認知行動パ
ターンを享受し育みながら暮らす人たち、彼らのタフネスへの到達には、
気質に加え、保健指導等からの学びが要るということが判明しています。
 目新しいことではありませんが、健全な生活習慣のための物理的なゆと
り、医業辺縁の出来事(兼業の多さ、クレーム等)の組織的処理などがあ
たりまえに担保された上で、健康と働きがいを守るような衛生対策を再考
したいと思います。  
     ◆独立行政法人労働者健康福祉機構 本部研究ディレクター
       香川労災病院 勤労者メンタルヘルス研究センター長
                        小山 文彦  氏 
↓香川労災病院勤労者メンタルヘルス研究センターのHP   
 ★小山先生のこれまでのご活動など掲載されています。
↓★これまでにご執筆されたオススメ図書です♪
①ココロブルーと脳ブルー  知っておきたい科学としてのメンタルヘルス
 (産業医学振興財団 2011年)
②治療と仕事の『両立支援』メンタルヘルス不調編
 (労働調査会 2013年5月発刊)
 ★医師や看護師など医療職の復職事例も複数紹介されています。
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〔2〕『 女性医師復職支援での協力体制について(後編) 』
 
 教授、診療科長は本当に大変です。いかに女性医師にモチベーションを
高く維持させる仕事をさせるかが重要と考えます。大学であればスタッフ
(助教以上)の枠を取得するには当直をしないといけないと平等ではあり
ません。しかし、男性と女性の平等なんて男性から母乳でも出ない限りあ
り得ないと思っています。この女性医師は当直をしない代わりに研究をし
て論文を書いて科研費を獲得するならスタッフにする価値は十分でしょう。
 学生や研修医、大学院生に指導できる女性医師も当直をしていなくても
スタッフとしての資質はあると思います。准教授、講師、助教、医員、研
修医(一般病院であれば科長、中堅、若手医員、研修医)のそれぞれが女
性医師のそれぞれを許容するかはわかりません。同じ女性同士でも未婚の
バリバリ働いている医師が主婦の女性医師のスタイルを許すかどうかはわ
かりません。職場のトップが、「女性医師が当直をしない」、「外来だけ
をする」、「手術だけをする」、「研究を主とする」、「教育のプロとな
る」などの多様性を理解しなければいけませんし、男性を含めた同僚の理
解が必要です。 
 女性医師支援を語る上で女性だけが話をして女性だけが聴く講演は無意
味だと思っています。その診療科内で理解されるために全員が話し合いに
参加し興味を持つことだと思います。結局は女性医師をうまく活かすこと
が男性医師の仕事、プライベートをも有意義にさせるからです。 
 できることならば当直をする医師には手当を厚くするか当直明けはお休
みするようにしていくことが理想です。男性ならば当直明けに育児をする
ことができればと思います。女性が当直をしない代わりに論文を書いて男
性医師を慌てさせることになればと考えます。一般病院では当直明けは午
後から休みとなる病院も増えてきましたが、大学病院では人が足りなくて
できていないようです。古く日本は全員が同じスタイルで仕事をしてきた
かと思います。これだけ女性医師が増えた以上、多様化を認めなければ成
り立ちません。自ら明確な将来のビジョンを持った医師が求められます。
 職場の集団に溶け込み、個性(専門)を持つ女性医師が活躍するように
国、地方、大学、病院、家族、同僚が同じ考えで協力するようになって欲
しい。私は医師として働く限り女性医師を支援していきたいと思っていま
す。医学生には妊娠の診断がついたらすぐに復職の日程、仕事の目標を明
確に周囲に伝えるようにすることを現在教育しています。支援は甘えさせ
るのと違います。 
     ◆浜松医科大学医学部附属病院 産婦人科講師 
                         内田 季之 氏 
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〔3〕イージェイネット事務局からのお知らせ
 
★ニュースリリース★
 ① [働きやすい病院評価』/2病院を認証しました。
 『働きやすい病院評価』評価・認証委員会を2013年4月21日(日)、
  13時より、東京にて開催いたしました。
  その評価・認証委員会により、下記の2病院につきまして
  認証が認められましたので、報告いたします。
・社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 福井県済生会病院(再受審)
・独立行政法人 国立病院機構 長崎医療センター 
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 ② 働きやすい病院評価事業(ホスピレート)説明会
*働きやすい病院評価・認証(ホスピレート)説明会
 東京と大阪にて、働きやすい病院評価・認証の説明会を
 事前予約制にて開催しております。
 説明会参加の旨をお申しでいただきましたら、
 随時、個別にて調整をさせていただきます。
 詳細は、イージェイネット事務局までお問い合わせください。
【東京会場】
        株式会社アポプラスステーション 会議室
    〒102-0071 東京都千代田区富士見二丁目7番2号
    ステージビルディング9F・10F
    JR飯田橋駅 東口/西口 徒歩3分
    東京メトロ 飯田橋駅 東西線 A4出口、有楽町線/
    南北線 B2a出口 徒歩2分
【大阪会場】
        株式会社アポプラスステーション 大阪支店 会議室
    〒541-0043
    大阪府大阪市中央区高麗橋四丁目3番7号 北ビル5階
    大阪市営地下鉄 御堂筋線 淀屋橋駅12番出口より徒歩2分
 
******<♪NPOイージェイネット メルマガ事務局より編集後記♪>*******
 5月配信(第42号)のメルマガはいかがだったでしょうか?
今月は私の地元香川から、県内外で大変ご活躍されている香川労災病院の小
山先生に、医療従事者のメンタルヘルス支援についてのコラムをご執筆頂き
ました。小山先生の著書「ココロブルーと脳ブルー」より長引く睡眠不足は
前頭葉の血流低下を起こし、うつ病に近い状態になるそうです。特に医師は
長時間労働になりがちな仕事であり、メンタルヘルス不調と全く無関係では
ないと思われます。また新著書「治療と仕事の『両立支援』メンタルヘルス
不調編」で医療従事者の事例では、仕事量増加やトラブル、異動・転職等が
きっかけでのうつ事例を掲載しています。たくさんの支援事例が掲載されて
おり、ぜひ御一読をおススメいたします♪
 浜松医科大学の内田先生からも熱いメッセージを2ヶ月間を通じてお送りさ
せて頂きました。当NPOの活動は元々女医の生涯を通じた就労とキャリア継続
が目標であり、女医支援を話し合う上で女性だけで話し合いをしても何の解
決にもならないというご意見に激しく同意です。『支援』とは何か、また支
援を受ける女性医師側にきちんと考えてもらうよう投げかけつつもサポート
しておられる内田先生の貴重なご提言、イージェイネットもしっかりと受け
止めたいと思いました。
小山先生、内田先生、お二人とも大変お忙しい中当メルマガに心強いメッセ
ージをご寄稿頂きまして、誠にありがとうございました!
 当メルマガは、会員や読者による参加型の情報発信を目指しております。
皆様からぜひ載せたい記事やご意見等ありましたら、ご遠慮なくお申し出下
さい。今年もどうぞよろしくお願いいたします!!(藤川)
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