特定非営利活動法人 イージェイネット(Ejnet)

医療業界の就労環境改善や、適正な人材評価が行われるための仕組みづくりをお手伝いします。

Ejnetメルマガバックナンバー・第64号

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◆◇NPO法人イージェイネット メールマガジン第64号◇◆
「時代をリードする医療人が働きやすい病院の作り方、お教えします」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2015/3/31  ━━

◆◇━━━━━━━━◆◇◆今月のニュース◆◇◆━━━━━━━━━◆◇

〔1〕『 誰にでも働きやすい職場風土の醸成を目指して 』
    ◆北里大学医学部公衆衛生学 助教 江口 尚 氏
〔2〕『 医師のワークライフバランスを考えようin関西 』のご報告
    ◆関西医科大学医学部医学科 5年 三宅 聡美 氏
〔3〕イージェイネット事務局からのお知らせ
     ① 働きやすい病院評価 評価委員会のご報告
    ② 働きやすい病院評価事業(ホスピレート)説明会
〔4〕メルマガ事務局より編集後記

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〔1〕 『 誰にでも働きやすい職場風土の醸成を目指して 』

 2001年に大学を卒業後、2年間の臨床研修を経て、卒業した大学が産業医
を養成することを目的とした大学だったということもあり、産業保健の世界
に飛び込みました。もともとは、経済や経営、企業に関心があった私にとっ
ては、さほど抵抗感もなく、寧ろ強い関心をもって、産業医としてのキャリ
アを選択しました。まずは、中小企業の産業保健を専門に行う企業外労働衛
生機関で働き、それから外資系のエネルギー企業、民族系の電子部品企業で
専属産業医として約10年間キャリアを歩み、多くの職場風土を経験しました。
 その10年間に、大学院で経営学修士や医学博士を取得する中で、職場の風
土への関心が日に日に強まった結果、研究の世界に飛び込んでしまい、2年
ほど前から現職で仕事をしています。
 さて、今回は私の研究分野の一つである、働きやすい組織風土について、
お話をしたいと思います。組織風土は、「労働者に直接的に、あるいは間接
的に知覚され、彼ら、彼女らのモチベーション及び行動に影響を及ぼすと考
えられる測定可能な一連の仕事環境の特性」と定義され、そのような個人の
主観的に認知される概念の集まりです。難しい説明はともかく、組織風土と
いう言葉は、「うちの組織の風土は・・・」といった形で、よく使われる言
葉ですが、皆さんも一度は口にしたことがあると思います。 
 近年、この組織風土が労働者の健康に与える影響についての研究がなされ、
研究分野としても関心が高まっています。例えば、いじめの生じやすい組織
風土や、労働者の欠勤に影響を与える組織風土といったものがあげられます。
 話は少し変わりますが、2013年の障害者総合支援法、障害者雇用促進法の
改正、2014年の難病法の成立など、障害者や難病患者の就労に関する関心が
高まっています。企業は、雇用の分野における障害者差別の禁止、合理的な
配慮の提供義務が求められるようになり、健常者だけでは無く、障害者や難
病患者が働きやすい組織風土の醸成がこれまで以上に求められるようになっ
ています。障害者や難病患者が就労を継続するために必要な合理的な配慮を
受けるためには、自分の障害のこと、難病のことを企業、職場に申し出るこ
とが不可欠です。
 しかし、障害者職業総合支援センターが2011年に行った調査では、30~50
%の方が、「企業に障害や病気を誤解されずうまく伝えること」「企業に対
して職場で必要な配慮等を伝えること」が出来ないと回答しています。私が、
難病患者さんを対象に行ったインタビュー調査でも、病気を職場に伝えたり、
必要な配慮を説明したりすることは、とてもハードルが高いことが分かって
います。そのため、職場で、業務内容や残業時間の制限等の適切な配慮を受
けることが出来ずに、無理をしてしまい、心身の状態が不安定になり、勤怠
が乱れて、職場の理解が得られず退職をするケースがあります。
 少し前置きが長くなりましたが、この話は、障害者や難病患者だけではな
く、妊娠、育児、介護などを理由に働く時間に制約を持った労働者全般に当
てはまる話ではないでしょうか。きっと、難病患者や障害者が働きやすい、
働き続けることができる職場風土というのは、妊娠や育児、介護をしている
人達にとっても働きやすいはずです。
 私が行った健常な一般労働者を対象にした調査では、上司や同僚の支援が
あり、仕事の量と裁量度のバランスが適度な良好な職場風土で働いている労
働者ほど、働き方に制約を持った方々への仕事上の配慮、例えば、同僚の定
時勤務を許容すること、が「できる」と回答しています。働く事に制約をも
った労働者が、十分に能力が発揮できるようにするためには、相互に配慮が
行えるような良好な職場風土の醸成は不可欠です。そのためには、私は、経
営者や行政だけではなく、広く社会が、その原因に関わらず、働き方に制約
を持った方々が、イキイキと働けるような職場風土に関心を持つことが、ワ
ークライフバランスを進める上でも、必要ではないかと考えています。
 今後も、社会が関心を持ってくれるような情報発信ができるように、私自
身、現場の声を大事にしながら、職場の風土に関心を持って研究に取り組ん
でいきたいと思います。
  ◆北里大学医学部公衆衛生学 助教   江口 尚 氏           
              (平成13年産業医科大学卒業)         
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[2]『 医師のワークライフバランスを考えようin関西 』のご報告

 はじめまして、関西医科大学5年の三宅聡美と申します。
このたびは、EJnetコラムへの寄稿の機会を頂き、誠に有難う御座います。
 平成27年2月22日(日)に、関西医科大学において「医師のワークライフバ
ランスを考えようin関西」というイベントを日本医師会と共催いたしました
ので、その様子をご報告いたします。講師として、仲野徹先生(大阪大学大
学院)、仲野由季子先生(野瀬クリニック)、賀來敦先生(清風会 岡山家庭医
療センター)、村田亜紀子先生(清風会 岡山家庭医療センター)、齊藤三佳先
生(大阪市立大学小児科)の5名にお越し頂きました。
関西を中心に医学生、社会人計20名程度の参加者を迎え、講師の先生の一日
のタイムスケジュールを紹介したり、医師のワークライフバランスに関する
パネルディスカッション、グループトーク(茶話会形式で講師の先生に学生
の疑問や悩みにお答え頂く)を行いました。
■1.医師の現状理解
 医師の労働環境の現状や支援制度の紹介を行いました。
昨今、医師国家試験合格者における女性の割合が3割を超えており、女性医
師の増加がみられます。しかし女性医師は出産や育児により35歳前後で離
職する傾向にあり、医師にとって働きやすい労働環境をつくることが、医
療界全体にとって重要です。
また、そのために院内保育園施設、短時間勤務や当直免除といった支援制度
が多くの病院で導入されつつあり、それを利用し仕事と家庭を両立を成し遂
げたロールモデルとなる先生も増えつつある、という説明を行いました。
■2.講師の先生の一日紹介
 講師の先生の起床から就寝までの一日のタイムスケジュールの紹介を行い
ました。今回、2組の医師ご夫婦に講師としてお越し頂いたので、夫婦間に
おける仕事と家庭の両立、役割分担にも焦点をあてて紹介をしました。
■3.パネルディスカッション
 司会者にノトコードより平林慶史様を迎え、講師の先生方とパネルディス
カッションを行いました。
診療科の選択理由や専門医を取得するタイミング、結婚や出産の時期が自身
のキャリア形成にどう影響したか、また、育児に関してどの様な支援制度を
利用したか、などを伺いました。
 産休や育休に対する周囲の理解や、子供が病気になった際、どう対応して
いるかなど、文字通り生の声が聞けて大変勉強になりました。また、産休や
育休を取得する前にある程度の臨床能力をつけておくことの重要さや、細々
とでも良いので仕事を続けることが、完全に仕事を中断することに比べてど
れほど役に立つか、という、実体験に基づくアドバイスを伺える大変貴重な
機会となりました。
■4.グループトーク
 講師の先生を参加者数名ずつで囲んで、20分程度でグループを入れ替え計
120分間、自由談話の形式をとりました。会場に軽食を用意し、参加者が気
軽に悩みや疑問を相談できる様に工夫しました。
その後集合写真を撮影し、終了となりました。
■5.最後に
 講義や実習で学ぶ事のできない医師の先生方の生の声を聞く事の出来る場
を設けたい。
この思いで今回、先生方と気軽にお話が出来る場を設けるという事にこだわ
り、企画を立ち上げました。実際に、参加者アンケートにおいて「先生にお
気軽に相談できる場があるのが嬉しかった」「先生のアドバイスでキャリア
形成に関して自分の考えが変わり、女性でも細々と仕事を続けようと思うよ
うになった」「機会があればまたご相談させて頂きたい」といった感想を頂
き、この様な場を設ける事の重要性を感じました。
 また、本イベント参加者は男性:女性=1:1であり、男性もワークライフバラ
ンスやキャリア形成に強い関心を持っている事が伺えました。男性、女性共
にワークライフバランスやキャリア形成に関して真摯に考え、行動すること
が、医療界全体により良い影響をもたらすと信じています。

     ◆関西医科大学医学部医学科 5年  三宅 聡美 氏
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〔3〕イージェイネット事務局からのお知らせ
    ① 働きやすい病院評価 評価委員会のご報告
   ●開催日
   平成27年 3月 15日(日曜)
    ●開催時間
    11時開場、11時15分審査開始~16時終了
    ●開催場所
    アポプラスステーション株式会社
    東京都中央区日本橋二丁目14番1号 フロントプレイス日本橋 7階
   [本評価委員会にて認証した病院]
  ・一般社団法人 熊本市医師会 熊本地域医療センター(新規認証)
  ・医療法人 創和会 しげい病院(再認証)
  ・岐阜市民病院(再認証)
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 ② 働きやすい病院評価事業(ホスピレート)説明会
  東京と大阪にて、働きやすい病院評価・認証の説明会を
  事前予約制にて開催しております。
  説明会参加の旨をお申しでいただきましたら、
  随時、個別にて調整をさせていただきます。
  詳細は、イージェイネット事務局までお問い合わせください。

【場所】株式会社アポプラスステーション 会議室
    〒102-0071 東京都中央区日本橋二丁目14番1号フロントプレイス日本橋8階
    JR東京駅 八重洲地下街23番出口より徒歩7分
    地下鉄日本橋駅 D1出口徒歩30メートル(浅草線・東西線・銀座線)
    地下鉄茅場町駅 12番出口徒歩3分(東西線・日比谷線)
    *平成26年4月より東京会場の場所が変更になりましたのでご注意ください。

【大阪会場】
 説明会は2週間程度前までにお申し込いただければ、随時開催を致します。
 詳細は、事務局までお問い合わせください。
【場所】 株式会社アポプラスステーション 大阪支店 会議室
    〒541-0043
    大阪府大阪市中央区高麗橋四丁目3番7号 北ビル5階
    大阪市営地下鉄 御堂筋線 淀屋橋駅12番出口より徒歩2分

******<♪NPOイージェイネット メルマガ事務局より編集後記♪>*******
 3月配信(第64号)のメルマガはいかがだったでしょうか?
今月は、北里大学で産業保健分野の研究に携わられている江口先生にご登場
頂きました。企業では、働きやすい組織風土にしようなんてよく言われます
が、江口先生に働きやすい組織風土はどのような組織であるかを詳しくご解
説頂き、個人的にもなるほど!と明朗なご回答を頂いたと感服した次第です。
 2013年以降、障害者や難病患者の就労に関する法律改正など、社会の関心
が高まっているとのことで、読者の皆様も患者様からの就労継続のご相談に
応じられている先生方も多数いらっしゃるかと思います。病気を職場に伝え
たり、必要な配慮を説明したりすることは、とてもハードルが高いというこ
とを医療側が理解し、必要時にサポートしてくれることは労働者である患者
様もとても心強いのではないかと思います。
 また、働く事に制約をもった労働者が、十分に能力が発揮できるようにす
るためには、相互に配慮が行えるような良好な職場風土の醸成は不可欠との
ことであり、これは障害者・難病患者さんだけではなく、医療業界で働く全
ての職員にも通じるものと感じます。
 病院の職員自身が病気になったり、妊娠、育児、介護などを理由に働く時
間が制約されることもあるわけで、まずは医療業界自らが、働き方に制約を
持つ職員が働け続けられるような組織風土を持ち、社会にロールモデルとし
て情報発信して頂ければ…と感じた次第です。江口先生にはお忙しい中、ご
執筆をご担当頂きまして、誠にありがとうございました!
 また今回、さらに関西医科大学の三宅様に日本医師会様と共催された「医
師のワークライフバランスを考えようin関西」という興味深いイベントのご
報告を頂きました。女子医学生の割合も3割を超える中、学生の頃から自身
のワークライフバランスも考えつつ、医師としてのキャリア継続について、
先輩医師の先生方から生のお話を聞ける大変良い機会であったそうで、素晴
らしい内容であった事が伺えました。
(男性の参加率が女性と同じであったことに、時代の流れを感じますね!)
 今回ご報告頂きました三宅様や今回ご参加された学生さん達が、将来医師
としてイキイキと働き続けられるよう、イージェイネットも心より応援して
います^^♪
 当メルマガは、会員や読者による参加型の情報発信を目指しております。
皆様からぜひ載せたい記事やご意見等ありましたら、ご遠慮なくお申し出下
さい!!(藤川)
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 NPO法人イージェイネット  http://ejnet.jp/ 
(特定非営利活動法人 イージェイネット(女性医師のキャリア形成・
 維持・向上をめざす会))
*NPO法人イージェイネットブログも更新中!
 このメルマガに対し、ご意見・ご感想・ご質問がありましたらメルマガ
 担当の藤川までご連絡をお願いします。
(お問い合わせ先  ejnet-office@umin.ac.jp  メルマガ担当藤川)
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