特定非営利活動法人 イージェイネット(Ejnet)

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Ejnetメルマガバックナンバー・第57号

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◆◇NPO法人イージェイネット メールマガジン第57号◇◆
「時代をリードする医療人が働きやすい病院の作り方、お教えします」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2014/8/31  ━━
 
◆◇━━━━━━━━◆◇◆今月のニュース◆◇◆━━━━━━━━━◆◇
 
〔1〕『 男性医師が育休を取って考えた事 育児は仕事にも活きる!』 
  ◆産業医科大学 産業生態科学研究所 健康開発科学              
                非常勤助教  守田 祐作 氏 
 
〔2〕イージェイネット事務局からのお知らせ
    * 働きやすい病院評価事業(ホスピレート)説明会など 
 
〔3〕メルマガ事務局より編集後記
 
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〔1〕『 男性医師が育休を取って考えた事 育児は仕事にも活きる!』
  
 平成22年の6月30日より育児・介護休業法の改正が施行され、すべての父
親が育児休業を取得できるようになった。私の娘はその直後の9月に誕生し
た。私たち夫婦の実家は遠く親のサポートには頼れない。そこで、私は約1
年間の育児休業という選択をした。男性医師が、これだけ長期間育休を取る
のは産業医科大学初だった。
 
 育休初期は育休を取っただけで満足してしまい、今から思えば子供のこと
はほとんど妻にまかせっきり、やらなくてもよい仕事が気になって大学に足
を運ぶこともしばしば。そんな私を事件が襲った。ある日、帰宅すると妻が
授乳しながら涙を流していたのだ。何とかしなくては。でも、私にはうろた
えることしかできなかった。
 
 どうしたらいいのか分からず悩んでいる時、目に入ったのがアリスの会と
いう産業医大卒の女医支援を目的に卒業生が自主的に作った会(詳細は過去
ML参照)の企画する講演会のメールだった。テーマは育児をする男性=イク
メン。この会への参加が私の育児に対する姿勢を大きく変えた。
 
 NPO法人ファザーリングジャパンの大阪代表の夫から「育児をひとりじめ
しないで」と言われ、育児は負担ではなく、羨ましいほど楽しい事なんだと
気づかされたという奥様の話。研修医の時に育休を取った産業医大の先輩の
「今、この時しかできない育児は、キャリアをいったん置いておいても打ち
込むだけの価値がある」という話。これらを聞いて、まずはどっぷり育児に
浸かって楽しもう。そう心に決めた。
 
 育児に手を出し始め、日々できることが増えていく娘の成長は本当に楽し
かった。一方で、育児の大変さも思い知る。妻が用事で2日間娘と二人で過
ごした時など、トイレにも行けない、食事も流し込むように食べる、これが
365日続くのかと妻の涙の意味がわかった気がした。悪戦苦闘しながら育
児に浸り、気づけばあっという間に育休期間は過ぎていった。
 
 元の業務へ復帰する時が来た。妻も社会人大学院(臨床心理)に復学し、
日中は病院で実習、夕方から大学で講義、帰宅は23時ごろという生活を送っ
ていた。そのため、お迎えから食事介助、入浴、寝かしつけまでのコアタイ
ムは私一人で担当していた。仕事をしながら一人で行う育児は、育休中より
もむしろ大変だった。
 
 私の主な業務は、約10社の嘱託産業医、巡回健診、研究業務であり比較的
コントロールはしやすいが、面談記録など全ての業務を定時までに完了させ
るのは至難の業だった。お迎えの時間が迫ると無理やり仕事を終えねばなら
ない。残った仕事を気にしながら、育児にも身が入らず、どちらにも全力を
注げない状態は本当にストレスだった。
 
 これではいけないと思い直し、業務改善に着手した。紹介状や意見書は面
談の合間にその場で書く、面談記録や報告書は帰りの電車の中で書く、郵送
する書類リストを作成し大学に戻ってから一気に仕上げる。これにより戻っ
てから行う作業量が減少、作業効率もアップした。また、人に任せられる仕
事は思い切ってお願いする、会議、飲み会も厳選して参加するようになった。
おかげで、お迎えの時間が来てタイムアップということはかなり少なくなっ
た。
 
 限られた時間を効率よく使うことで、タイムマネジメント能力が上がる。
人に仕事を任せるには、コミュニケーション能力が必要になるし、トラブル
を想定して対策する危険予知能力が鍛えられる。育児と仕事はトレードオフ
の関係ではなく、育児に全力を注ぐと仕事に役立つ能力も身に付くのだ。
これは私だけでなく、育休を取った他の医師も同じように感じているよう
だ(参考1)。
 
 私は幸い、教授の理解もあり、同僚の支援も得られたので、育休取得には
苦労しなかったが、そうでない場合も多い。福井大病院救急部の林寛之先生
が育児休暇を取った時、総論賛成、各論反対で医局会での話し合いが半年間
も続いたそうだ。その時助けられたのが理解ある上司だった。
 
 林先生は当時の上司:寺澤秀一先生(現・福井大病院副院長)から「家族
を大事にできない医師が患者さんによい診療ができるはずがない」、「われ
われ救急医が急病、怪我で突然働けなくなったときのよいシミュレーション
になった」と励ましの手紙をもらい、辞めようとまで考えていたのを思いと
どまり、育休も取れたと語っている。(参考2)
 
 育児は業務能力アップにつながる、病気などで医師が抜けた場合の予行練
習になる、業務整理のきっかけになる等、育休は周囲の負担だけではなく前
向きな側面もある。そのことを上司が理解してくれれば支援が得やすくなる
だろう。そのためにも、育休を取った者はしっかり結果を残して、発信して
いくことが大事だと考えている。 
 
(参考1)第3038号 2013年8月5日【寄稿特集】“イクメン医師”奮闘中
 
(参考2)第2800号 2008年10月6日【対談】仕事も育児もデキるふたり
が語り尽くす―― パパ予備軍に捧ぐ育児講座
 
   ◆ 産業医科大学 産業生態科学研究所 健康開発科学               
                  非常勤助教  守田 祐作 氏 
 
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〔2〕イージェイネット事務局からのお知らせ
 
*働きやすい病院評価事業(ホスピレート)説明会
 
  東京と大阪にて、働きやすい病院評価・認証の説明会を
  事前予約制にて開催しております。
  説明会参加の旨をお申しでいただきましたら、
  随時、個別にて調整をさせていただきます。
  詳細は、イージェイネット事務局までお問い合わせください。
 
【場所】株式会社アポプラスステーション 会議室
    〒102-0071 東京都中央区日本橋二丁目14番1号フロントプレイス日本橋8階
    JR東京駅 八重洲地下街23番出口より徒歩7分
    地下鉄日本橋駅 D1出口徒歩30メートル(浅草線・東西線・銀座線)
    地下鉄茅場町駅 12番出口徒歩3分(東西線・日比谷線)
 
    *平成26年4月より東京会場の場所が変更になりましたのでご注意ください。
 
【大阪会場】
 説明会は2週間程度前までにお申し込いただければ、随時開催を致します。
 詳細は、事務局までお問い合わせください。
 
【場所】 株式会社アポプラスステーション 大阪支店 会議室
    〒541-0043
    大阪府大阪市中央区高麗橋四丁目3番7号 北ビル5階
    大阪市営地下鉄 御堂筋線 淀屋橋駅12番出口より徒歩2分
 
******<♪NPOイージェイネット メルマガ事務局より編集後記♪>*******
 8月配信(第57号)のメルマガはいかがだったでしょうか?
今月は、アリスの会の谷口教授からのご推薦を受けて、産業医科大学の守田
先生にご登場頂きました!(産業医科大学初の長期間の育休を取られた貴重
なイクメン先生です^^)
 多忙な男性医師が、仕事と子育てを両立させることはなかなか難しいと思
われますが、守田先生の大変だったご経験から(実家を頼れない子育て環境
自体も大変です…汗)、公私に渡り工夫しながら両立に取り組まれてきてお
り、大変興味深い内容だと思いました。
特に職場復帰後に、お迎えから食事介助、入浴、寝かしつけまでのコアタイ
ムをお一人で担当されたご経験は、世の男性でも経験されてる方はあまり多
くないでしょうし、とても感心いたしました。(最初からイクメンではなか
ったと勇気ある告白もありがとうございます!)
 
 題名等からもご提言されている「育児は仕事にも活きる」「育児は業務能
力アップにつながる」という前向きなメッセージはとても印象深く、育児は
男性にとっても様々な仕事のスキルを上げる良い機会となると感じました。
男性医師の家庭参画への意識が少し変われば、職場や同僚、後輩らにも良い
影響を与えると思いますので、こちらも将来的に情報発信ができる男性の先
生方が増えれば良いなと感じました。
(イージェイネットの方向性として男性医師は家庭、女性医師は仕事継続に
気を配ることが大事と常々感じています。)
 守田先生には大変ご多忙の中、貴重なメッセージを頂きまして誠にありが
とうございました!
 
 当メルマガは、会員や読者による参加型の情報発信を目指しております。
皆様からぜひ載せたい記事やご意見等ありましたら、ご遠慮なくお申し出下
さい!!(藤川)
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